しろねことわたし
父が亡くなったのは夏真っ盛りの頃。私は汗だくで四十九日の準備に墓掃除に行った。 共用の水道でバケツに水を汲んでいた時、ふと岩の上に白い猫が座ってこっちを見ているのに気付いた。どうもこの辺に住み着いた野良らしい。人気の少ない平日の夕暮れに私が珍しかったんだろう。 私はその猫に挨拶して、もうすぐここに来る事になる父が退屈しないように、遊び相手になってくれるように頼んだ。 季節は巡って冬。実家の周りも雪化粧した朝。会社に行こうと車を門の外に出して、シャッターを閉めようとした時、物音がして屋根にあの白い猫がいてこっちを見ているのに気付いた。墓場から家まで近いとは言え、他にも民家はあるし、畑もある。しかしその猫は私の家の屋根に登っていた。 久しぶりに父を思い出した私はその猫に 行ってきます と行って車に乗り込んだ。 もう年の瀬。休みになったら墓掃除に行こう。